呪いと祈り

友達と歩いていたら、ニット帽の外国人に不意にCDを渡された。

 

え、これもらっていいの?

 

もちろん、けど印刷代がかかってるからお気持ちだけのお賽銭が欲しいな。

 

あーいいよ、あげるあげる。

あまって、五千円しかないわ。

くずしてくるからまってて

 

コンビニでガムを五千円で買う。店員に嫌な顔をされた気がする。気がする。

 

はい、2枚で千円でいい?

 

あーありがとう。

あとこれ、ついでに友達が編集してる本なんだ。どうだい?インドの少年が冒険する物語なんだけど。

 

あーただならもらっとくよ。

じゃあね

 

少し歩いて本を開くとむちゃくちゃ宗教勧誘だった。

 

は。

 

CDはまだその外国人のEPの可能性がある。友達に頼まれて本を渡しただけかもしれない。

 

近くの電気屋でCDプレイヤーに買ったCDを突っ込む。7曲で40分。実に怪しい。

 

聞くと1曲目も2曲目も普通のロックな感じ

最後の7曲目でいきなり、宗教チックなインドのお経のようなのが流れ出した。

 

あーあ。

クソむかついたので、CDは買い取ったが本は返そうと思い、さっきの道に戻る。

 

さっきの外国人はまた違う人にCDを売ったあとに本を渡していた。

 

本気でそいつに本を突き返して、お前の信じてるものはインドで少年が冒険する物語だと偽って広めなきゃいけないくらいのものなのか。そんなものなぜ信じれるのだ。逆に商売と割り切っているのならその宗教のいう地獄とやらに落ちるのはお前だと、言ってやる気だったが、直前でやめた。

 

一人だったら止められていなかったと思う。

友達と二人で怖くてやめた。

 

その外国人は鞄を盗まれないように道の看板の柱に鍵をつけて括っていたので、その鞄に本を立てかけて置いて退散した。

 

オーストラリアに修学旅行に行った時に、すごい素敵なストリートミュージシャンがいて、友達と記念にもなると思ってCDを買った。日本に帰ってきて聴いて、やっぱりいいものだった。ので、日本でCDを手売りしている外国人など手を差し伸べずにいられないではないか。

 

だが実際は一番嫌いなものだった。

 

このズレが余計かなしかった

 

呪いの言葉は誰にも届かず、祈りと願いはどこまでも行けます。

チョークで書かれた路地裏のヒーローが夕焼けを眺めています。

 

自分にとっての呪いは彼らにとって祈りであるかもしれないので、みんな違ってどうでもいい。結局はひとり。

 

あなたも僕も足りないね