大変恥ずかしい話だが、母親になにかをしたことがまるでない。
また大変恥ずかしい話だが、うちの家は母以外男しかいないが、まぁこの男どもが揃いも揃って母親に何かしたためしがない。
しかし、隣で誰かが母の日に何あげよっかなーなんて言ってるのを聞くと、今年は何かあげようかと思ったりして。少し考えてみたものの、全然いいものが思いつかない。
小学校2年生の時に空手の合宿帰りに、一個上の友達と話し合って、親にお土産を買って行こうとなり、当時は龍のキーホルダーやら金色の剣のキーホルダーやらをとてつもなく買いたかったが、その欲をなんとか抑え、親に喜んでもうために土産を買った。
何を思ったのか、実用的なものがいいだろうということになり、相談の上、しゃもじを買って帰ったのだ。
はい、お土産。と、その土地と縁もゆかりもないただのボコボコしたプラスチックを目にした母は、
いらんわこんなもん、家にぎょうさんあるわ。なに変なもんこーとんねん。もっとちゃうもんに金使え。
と言った。
その時はむちゃくちゃ腹がたった。
あのキーホルダーを我慢して、いろいろ考えて買ってきたのに、なんだその言い方はと。
確かに今考えるとむちゃくちゃいらないのだが、当時はそんな感じだった。
それ以来うちでは、家になにか買ってくる金があるなら向こうで楽しむためにお金を使いなさい。が主流となった。
だがそんなことも次第になくなり、近所に配るお土産を買うついでに家の分も買って帰ったりするようになるのだが。
直接母になにか渡したことなど最近は記憶にない。
なんてぼんやり考えていると、母の日が過ぎていた。
あ、昨日やん、母の日。やべ。
ということで急いで近くの花屋を探す。
カルテットでの満島ひかりを思い出して、いいセリフを探し、
すいません、このくらいの額でお花って包んでもらえますか?
久々に大阪から帰った母に花を渡した。
今度は文句なく受け取られた。
しゃもじよりはマシなものを渡せたのではと思ったり、あえてしゃもじを渡して十数年ぶりに同じような光景になっていてもよかったのではと思っていると、父親がやっぱりあいつは花屋の子なんだなと見当違いなことを言い出しそうだったので、そそくさと2階に上がった。